お香は自然からの贈りもの。
素材を配合することで、香りの世界はさらに広がります。
世界の国々から届けられる、さまざまな天然の香料を紹介します。
材そのものに芳香を有する木を、香木といいます。
その中で特に珍重されたのが沈香で、有名なものは正倉院御物として現在まで伝えられています。自然が作り出す香木の香りは、同種類の木でもそれぞれ異なり、その香りは私たちを魅了し続けているのです。
様々な外的要因によって木質部分に樹脂が凝結し、樹木自体が枯れていく過程で熟成されてできたものです。
「水に沈む、香りのする木」ということから「沈水香木」(略して沈香)と呼ばれます。
その中でも伽羅と呼ばれるものは、香気や油質の違いにより分類されます。
インドシナ半島・インドネシアなどの熱帯雨林で産出され、薫香料のほか、薬用としても古くから知られています。
インド・インドネシア・マレーシアなどで栽培されています。その中でも、インドマイソール地方のものは最高品質で「老山白檀」と称されます。
薬用・薫香用・彫刻工芸品・扇などにも使用される最もポピュラーな香木です。サンダルウッドとも呼ばれます。
地球規模での自然環境や社会情勢の変化にともない、品質の良い沈香や白檀を安定供給することは次第に困難になりつつあります。ことに沈香は絶滅危惧種として、世界的な視野での保全管理が必要とされています。私たちは日本の香文化の一端を支える立場として、この課題に取り組み、考えていきたいと願っております。
お香の原料として使用される天然香料には数十種類あり、天然のものだけに入手困難なものも少なくありません。
これらは、中国やインド、東南アジアを中心に産出されます。中には、香辛料や漢方薬として親しまれているものも多くあります。
シナニッケイ(クスノキ科)の樹皮を乾燥したもの。中国南部・ベトナムなどで産出する。
ダイウイキョウ(マツブサ科)の果実を乾燥したもの。八角茴香(スターアニス)ともいう。中国南部(広東・雲南省)で産出される。中華料理の香味付けには欠かせない香辛料。
チョウジノキ(フトモモ科)の花蕾を乾燥したもの。モルッカ諸島・ザンジバルなどで産出する。香辛料クローブとして広く用いられる。
アンソクコウノキ(エゴノキ科)の幹を傷つけ滲出した樹脂。スマトラに最も多く産する。
ニュウコウジュ(カンラン科)の幹から滲出した樹脂。アフリカ東北部・アラビア海沿岸部に産する。キリスト教の儀式における焚香料としても知られている。
リュウノウジュ(フタバガキ科)の心材の空隙に結晶として析出したもの。スマトラ・ボルネオ原産で、薫香料や防虫剤として用いられてきた。日本のマルコ山古墳から出土し、その芳香が認められて話題になった。
中国南部に産するショウガ科バンウコンの根茎を乾燥し切片にしたもの。
巻貝の蓋で、主に保香剤として使用する。現在はアフリカ東北部沿岸産のものが主である。
インドネシアなどで産するシソ科の草本を乾燥したもの。パッチュリーとも呼ばれる。