四季のうつろいを愛で、香りに心遊ばせる--
日本の精神文化とともに育まれた香道の世界は東山文化の一翼を担う、香りの芸術です。
香道は、一定の作法のもとに香木をたき、立ち上る香気の異同によって古典的な詩歌や故事、情景を鑑賞する文学性、精神性の高い芸道です。
香道では、香りを「かぐ」とはいわず「聞く」と表現します。
現代の香道は、和歌や物語文学の世界を主題にした〈組香〉が主流です。
そこでは、いくつかの香木がたかれ、香りを聞きわけあいますが優劣を競うものではなく、あくまで、香りで表現された主題を鑑賞し、その世界に遊ぶのが目的です。他の香りや風を嫌うなど独特のことわりのもと、雅な雰囲気のうちにすすめられます。
室町時代、聞香が盛んになるにつれて、それぞれに異なる香りを有する香木に、繊細な識別が求められるようになりました。そこで、香りの分類法として体系づけられたのが〈六国五味〉です。
香木を産出地名などから、伽羅・羅国・真南蛮・真那伽・佐曽羅・寸門陀羅の六つに分類し、さらにその香りを酸(すっぱい)・苦(にがい)・甘(あまい)・辛(からい)・鹹(塩辛い)の五つの味で表現しました。