姉妹都市交流55周年 ボストンでコンチキチン

「かおり風景」第29回掲載/平成26年

 ボストンを訪問するようになって、30年を超える歳月が流れた。その間、いろいろな節目に、印象深い思い出をたくさんいただいている。ボストン日本協会100周年の記念ガラコンサートでは、日米交流史の楽しいミュージカルがあった。私の友人たちが兵隊さんなどに扮して頑張っていた。
 私が初めてボストンを訪問する機会を得たのは、個人コレクションにあった二つの蒔絵の美しい十種香箱のおかげだった。「なぜ、この使い方を知る日本人がいないのだ?」というのがオーナーの素朴な疑問だった。美術品として文様の説明や制作技術の解説などは、何人もの学芸専門家に出会ってきたけれど「誰も使い方を知らない、何故だ?」というニーズが私をボストンまで招いてくれた。私の説明にとても喜んでくださり、是非これを用いてお香のパーティーをしようという楽しいアイデアに、私は日常使う道具と紋付袴を持参して二回目の訪問をすることとなった。ボストン日本協会の理事会メンバー達にとって、香炉に静かに立ち上る香木の香りに向き合う静寂のひと時はとても新鮮で楽しいらしく、恒例の行事として続くようになった。
 ボストンと京都は姉妹都市ということもあり、おりに触れ節目の年がやってくる。私自身はこの活動の当事者ではなかったのだが、提携40周年を迎えられる頃には、当初熱心に交流活動に取り組んで来られた方々の世代がすっかり高齢化し、少しずつ私も気にかけるようになっていた。ボストン子供の博物館には「京の町家」という素晴らしい展示施設がある。西陣の町家を移設してビルに組み込んだもので、長年熱心なスタッフによって継承され、子供達が異国の生活を子供の目線で体験できるように充実したプログラムが提供されている。
 今年は、この姉妹都市提携55周年。何か記念になることを……と模索される中で、祇園囃子の演奏が候補に挙がった。昨年持ち帰り長刀鉾祇園囃子保存会に相談したところ、参加希望する有志でやってみようと前向きな機運が高まり、総勢19名の演奏団を組織して市民交流ができることとなった。せっかくなので、ボストン日本協会の年次総会の場で演奏するようにとの企画をいただき、5月の連休を利用して一週間の旅となった。
 さて、コンチキチンの祇園囃子がボストンでどのように響くことやら楽しみにしながら、また新しい思い出をいただきに訪問してみよう。総領事館・日本協会のみなさんに大変お世話になっての取り組み。感謝の一念だ(機中にて)。

筆者
畑 正高(香老舗 松栄堂 社長)

千年の都に生まれ育ち、薫香という伝統文化を生業にして、日頃考えることや学んだことを折に触れ書きつづっています。この国に暮らすことの素晴らしさ、世界の中に生かされていることのありがたさ…お気付きのことがありましたら、お聞かせください。