入賞作品の発表

第38回 「香・大賞」

奨励賞
『 さくらけむし 』
坂本 孝仁(さかもと たかひと)
  • 10歳
  • 美馬市立江原南小学校
  • 徳島県

 夏休みの自由研究で昆虫食を選んだ。小学2年生の時にセミでハンバーグを作ったけれども、そのにおいはエビのようだった。もっといいにおいのする虫はいないのかと思っていたら、さくらけむしが本当にさくらのにおいがすると聞いた。
 本当かな。さくらの木につくけむしってかみの毛がぬけてしまうってお母さんから聞いたことがあるけれど、それとはちがうのかな。
 そんなことを思っていたけれど、さくらけむしは夏休みにはいなかった。去年も気がついたら冬になっていてさくらけむしをとることができんかった。
 今年こそはわすれないぞ、って思っていたけれども、やっぱりわすれかけていた。そんな時に父さんが、
 虫取りにいくよ
といって連れて行ってくれた。さくらの木にいるって聞いていたけれど、下のほうにはいなかった。上を見てみると、うんと高いところにいた。虫取りあみじゃえだにひっかかりそうだったから落ちていた長い枝を使ってとった。さわると糸を出してくれるので取りやすかった。1匹ずつとっていたけれど、1本のさくらの木のえだにうじゃうじゃいた。
 うわー、大漁だ。
うれしくなってむしかごいっぱい取った。それをそのまま天ぷらにしてみた。
 じゅーっ、ぱちぱちぱち。
いい音といっしょにさくらのいいにおいもするかと思ったけれども、しなかった。
 あれっ、これ本当にあっているのかな。
少し不安になってきた。でも、あげたてのさくらけむしを口に入れたらふんわりとさくらのにおいがやってきた。
 ああ、秋なのに春の香りだ。
 大漁だったから、お姉ちゃんがこうかく類アレルギーだから、さくらけむしをみそ漬けにしてはっこうさせてみることにした。
 さくらみそのいいかおりがぷうんとした。