心の中に
聴こえるものを音楽に
視えるものを絵画に
文化として記憶してきた私たち
香るものに響く心を
言葉で表現してみませんか
古のやまとうたのように
SNSでつぶやく誰かの言葉のように
香りエッセイは
香りに響く心を言葉に託して
未来に届けます
第41回「香・大賞」は、前年の40周年を経て新しい一歩を踏み出しました。昨年は周年事業としてラジオ番組(FM京都)に取り組み、審査員の皆様のご協力も得て電波を通じて香りエッセイの魅力を広く伝えることができました。これまで「香・大賞」を知らなかった方々をはじめより多くの関心をお寄せいただき、応募総数は2,073作品にのぼりました。
例年多く見られる「自然の香り」や「生活の香り」といった身近な題材であっても、あたりまえに思っていることの奥に変化があり表現の解像度が求められ、香りエッセイは大きな転換期に差しかかっています。東北の大震災やパンデミックを機縁に香りを敏感に察知したり、感じにくくなったりするかつてない体験の中で人間関係も変わり、それは一時的なものではなく、人々の生活や感受性の中に深く定着しているように感じます。
金賞作品「りんごの灯」は現代の日本社会が抱える高齢化の問題に関わる作品ですが、あくまでも作者自身の視点と言葉を手放すことなく最後はりんごの香りに希望を見出します。エッセイの本質を踏まえながら小説のように豊かな表現力で綴った本作は高く評価されました。作者の心に映った「かおり風景」が、説明的な言葉ではなく、その人ならではの言葉で届けられたとき、私たちは心を揺さぶられます。今回の「香・大賞」は、そうした言葉の持つ力をより強く実感させてくれました。
香りという目に見えないものも含め五感を大切にする意義が再認識されています。香りエッセイは800字の中で時空を行き来でき、「過去と未来」「親と子」「戦後間もなくと現代」などの垣根を乗り越えて思いをつなぐ力があります。香りとともによみがえる情景や心情が、読み手も共感できるエッセイの中で浮き彫りになったとき、書き手一人ひとりの作品は、時代を映し出すアーカイブとして価値をもつものと思います。
入賞作品の発表