2010年9月アーカイブ

「かおり風景」第25回掲載/平成22年

 空想の世界ではありますが、「地球環境議会」という不思議な計画を耳にしました。この議会では、地球上の生物のあらゆる種が代議員をたて、一票の権利を行使することができるそうです。それぞれの種が生命体としてどれだけのボリュームで存在しているとか、どの地域に分布しているとか、まったく問うてはくれません。とにかく、一種に対して一票ということが基本であり絶対的なルールなのです。その種がどれほどに高等かということも問題にはされません。すべての種に対して同等の生存権を認め尊重し合い、地球環境上に共存共栄を求めるのです。そのための議会だそうです。

 地球上の動植物には、分類上もうけられた階層があります。界・門・綱・目・科・属・種とされています。私たちは、サル(霊長類)目ヒト科の哺乳動物ということになります。そのヒト科に、3~5分類ほどの人種群として生物学的な分類もあるようですが、いまや明確な分類をすることもむずかしく、差別意識を助長しかねないということからあまり議論されることはなくなっています。しかし、この環境議会に一口でも多くの代議員をだすために、ここは種として五分類としておきましょう。
 ちなみに、犬の場合、ネコ(食肉類)目イヌ科の哺乳動物となります。犬種を考えると、かなり種のあることが推測できます。私たち人間がかかわって新しい種を創造してきた歴史もあります。イヌ科に対しては、代議員の選出口数は原生種の範囲だけにしていただけるよう、交渉する必要があるようです。

 さて、この議会で、化石燃料の使用についてその可否が議論されたとしましょう。あるいは、プラスチック素材の生産と使用について一部の植物種から合同提議されたと考えてみませんか。議会における議論の方向は、われわれヒト科の主張もむなしく、圧倒的多数によって将来的にその使用を取り止めることが可決されると容易に推測することができます。最終的な施行まで3年の猶予が認められた、あるいは、学術的な研究と調査のためにごく少量の範囲で使用が認められた、ということになるのではないでしょうか。必死のロビー活動の苦労が少しは功を奏して、穏健な考え方をする植物関係の多くの種が、ヒト科の立場を理解しその主張を許容してくれたというようなことが見えてきます。

 持続可能な生物多様性環境を突き詰めて考えてみると、人類が具現してきた文明化の歴史は、地球環境議会においては、ことごとく廃案とされるものばかりであったと気付くことができます。50万年の昔に「火を発見」したという人類ですが、その火の利用をも放棄しなければならなくなりそうです。一方で、もし「地球環境裁判所」が開廷されたら、そして「地球環境裁判員制度」が施行されたら...。

※発表年代順

筆者
畑 正高(香老舗 松栄堂 社長)

千年の都に生まれ育ち、薫香という伝統文化を生業にして、日頃考えることや学んだことを折に触れ書きつづっています。この国に暮らすことの素晴らしさ、世界の中に生かされていることのありがたさ…お気付きのことがありましたら、お聞かせください。