香・大賞 kaori taisho

第33回「香・大賞」

奨励賞

『 おじいちゃんのイチジク 』
滝川 知輝(たきかわ ともき) 15歳 学生 愛知県

 窓を開けると、風に乗ってほのかに香る甘い香り。イチジクのにおいだ。庭にある、これはおじいちゃんのイチジクの木。
 岐阜に住むおじいちゃんの家には、大きな大きなイチジクの木があった。庭を占領するくらい枝を張った大きな木。その木に、秋になると実がいっぱいなったものだ。
「じいちゃん、イチジク食べたい」
 秋におじいちゃん家に行って僕が言うと「じゃあ一緒に、取りに行くか」そう言ってじいちゃんはザルを用意する。そして木のそばに立てかけてあった脚立に上り、イチジクの実を取ってくれる。イチジクは取り口から白い汁が出て、その汁は手にはり付いてちょっと苦手だけど、でもおじいちゃんのイチジクはとっても甘くてすっごく美味しい。
 ザルに山盛りになったイチジクを、僕はお腹いっぱいになるまで食べる。あんまり食べると、お腹痛くなるよとお母さんに言われるけど、でもおじいちゃんのイチジクは美味しくて止められない。そんな時、こちらを見つめるおじいちゃんと目が合って、僕らはニカッと笑いあう。
 後でおばあちゃんに聞いたけど、おじいちゃんは僕たちに美味しいイチジクを食べさせる為に、秋には毎日毎日落ち葉をたくさん集めてきて木にやり、肥料にしてくれたらしい。だからあのイチジクはあんなに美味しかったのだ。おじいちゃんの心が、たくさんこもっていたから美味しかったのだ。
 今僕の家にあるイチジクの木は、おじいちゃんが挿し木して作ってくれた苗を、移植したものだ。まだまだ小さいけれど、でも少しずつ実が取れるようになってきた。今年取れたのは、お仏壇のおじいちゃんにお供えした。
 イチジクの木の、ほのかに甘い香りをかぐとおじいちゃんの笑顔を思い出す。おじいちゃんの「美味しいか? それなら良かった」という声を思い出す。