香・大賞 kaori taisho

第32回「香・大賞」

環境大臣賞

『 時代の生き証人鶴橋 』
濱田 將司(はまだ まさし) 66歳 会社員 大阪府

 ネットで、絶対に住みたくない環状線の街の1位にランキングされているのが鶴橋です。他にも「鶴橋」で検索すると汚い、柄が悪い、治安が良くない等の言葉が目立ちますねんけど一番多いんが「臭い」ですわ。生野区に生まれイクノで育った私は、そんなん書いてる人らに言いたい。「焼肉やキムチのどこが臭いねん! なんでっか、あんたら焼肉やらキムチ食べまへんのんか!」と。そんな鶴橋を環境省が、今から15年前にかおり風景百選に選んでくれたとはついこないだ迄知らなんだ。生野区に永年住んでるもんからしたら快挙ですわ! そもそも鶴橋は、仁徳天皇の御世に「猪甘津(いかいのつ)に橋を渡す、すなわちこの処を名付けて小橋という」と書いたあって、我国最古の橋があって、河内や大和への交通の要でした。その橋が、後に鶴の橋になったんでっせ、どないです歴史のロマンを感じまへんか? それがでっせ、戦時中に建物疎開で強制的に家が撤去されたわけですわ。私の実家近くから鶴橋方面に通じる道に疎開道路というのが今もあります。戦争が終ったらそこは広大な空き地になるわけで、そこに青空市場、ヤミ市がでけて来ます。私が生まれた昭和25年頃には食品から繊維製品迄、幅広い品がそろて広い範囲からお客さんが来るようになったそうです。なんべんか再開発の計画もあったそうですが、権利関係が複雑で戦後のヤミ市の空気残したまま今に至っております。この辺りに焼肉店が増えたんは昭和50年代になってからで、鶴一や高麗市場のキムチ屋はんがメディアに取り上げられてからです。臭いと香りは表裏一体、お腹空いたら焼肉やキムチの臭いは食欲そそるええ香りです。私の友だちの自称シンガーソングライターが作った歌に、こんな詞がおます。〝甘く綺麗なネオンの裏が本当の大阪〞戦争の爪痕今も残して、鶴橋の香りこそがホンマの大阪、時代の生き証人。